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 江戸彼岸桜

 もともと大島桜と彼岸桜の雑種ということで日本全国古木はほとんどこれになる。
霞桜で200年ちょっとの寿命に対し江戸彼岸では最長1000年の寿命があるわけで桁が違っている。
またこれらの品種も親株の実生から生まれ出たらしきものも多く、他の桜との交雑、江戸彼岸同士の交雑などで多少の変化も見られるのが楽しみかもしれない。
 水田や山地でも水のわくところでは根が腐ってすぐかれるので、排水の良いところで育てるべきで、割りあい生育は良いほうになる。根はひげ根で細かい。よく肥料も吸収する。生育も早いので施肥の必要もなく、切り衰えもないので、邪魔な枝は切り取っていける。
 いろいろ出回っている江戸彼岸には桜天狗巣病に異常に弱いものが多い。雑種と思われる。病気に強いものは樹齢の400年以上の江戸彼岸を挿し木するか吸枝を取るかして育てたほうが良いと思われる。

 花さか爺さんでおなじみの「剪桜翁伝」に使用された桜はこの桜であったと推定する。よく寺に植えてあり、天台の坊さんがよく寺に尽くしてくれた檀家の人たちに、旧正月に堂を暖めて桜を咲かせてご馳走するという話を聞いたことがある。おそらくそのようにして当事の知識階級の坊さんが見つけた技術が、室町時代から庶民に普及されてきたと思われる。ついでににせ爺さんが失敗したのは、咲くべき桜の品種を知らなかった、桜の休眠の覚めるのを知らなかった、桜の快適に咲く温度を知らなかった。見よう見まねのうまくいかない例として挙げるが、意外に農業は猿害(本物のサルではなくて猿真似のサル)が産業の汚点だ。ここに一昔前は普及員が来て右の技術を左に持ち回るのでいきなり特産品が予想もしない展開をしてきた。最近は県も国も情報のコントロールがよく効いており、また技術も複雑化したところに、特許、品種登録が入り込んで、ものまね爺さんは出来にくくなってきている。
 それはさておき、古来いけばなの桜はこの江戸彼岸桜が用いられ、構成が決まっているのでいまだ引き合いがある。花もち、休眠などの点で東海桜や啓翁桜が扱いやすいにもかかわらず、なかなかしぶとい人気だ。そしてこの長い寿命は桜という記念碑に永遠の魅力を与えている。
 
 ほとんどの話は古木の維持再生であるが、江戸彼岸の品種保持は挿し木活着率1/35くらい、接木の台をよく選べば活着率1/2で増殖できる。腐りかけた老木を助けるには、腐敗部分の切除、呼接ぎ、土の入れ替えなどがあるが、樹木医や土建屋さんの仕事だろう。
 現在、石灰硫黄合剤は桜に認可がない(2008)ため今までの文献によった安易な処理は出来ないので、時々刻々と変化する農薬使用基準に沿って腐敗部分を押さえていくしかない。トップMペーストはつかえるようだが万能薬としてなんにでも効くが、樹脂病には効かない。