素敵な「愛久作」ありがとうございます。
 失礼ながら実名は伏せさせていただきますが、年は52才調布市在住の公務員でご
ざいます。
 玄関に3本、居間に7本ガラスの花瓶に生けておりました。
3日目でしょうか家に戻ると開きかけた桜から甘い香りが漂ってきましていました。
主人も仕事からもどると「おやこの桜匂うんだね、」といって食卓についてから、
「そういえば沙耶も桜の花見に行くといつも「においがいっぱい、あっちもこっち
も」といってたけど、桜にもにおいがあったんだな。」と申してため息をついており
ました。
 沙耶は3番目の私の子どもでございましたが7歳でこの世を去りました。兄と姉は
黒髪もふさふさした骨太な子でしたが、沙耶は2ヶ月近い早産で髪も茶色で保育園の
ときから周りの子より一回り小さい子でございました。大人になるまでに元気にしよ
うとそんなことで主人もよく休日には公園などにつれてまいりました。
 沙耶は3月生まれでございました。誕生日のお祝いは近くの神代植物園に行って、
桜のお花見をしてくることにしておりました。
 1歳のときの沙耶は座って桜を指差して何かかわいい声で叫んでいた、そんな思い
出がございます。
 2歳のときは「ねえねえ、においがいっぱい、あっちもこっちも、ねえお母さんわ
かるでしょ。」といわれてあちこち走って回って、でも私にはそのとき桜の匂いなん
てなにもわからなかったのでございます。沙耶はその後ぐったりと疲れて結局私とタ
クシーでうちまで戻ったのでございます。
  3歳のときも神代植物園でお花見をいたしましたが、そのときは大人しく主人と
シートの上でジュースを飲んだりして大人しくしておりました。この年から沙耶は保
育園に入りましたが、保母さんのお話ではとてもおとなしい子で聞き分けのあるいい
子ですとほめられておりました。
  沙耶は香りに敏感な子でした。イチゴをお兄さんお姉さんとともにおやつに分けて
あげると、「イチゴってねーすっぱい香りがするの。ねーねーわかるでしょ。」と良
くそんなことを言っていました。そうして、すぐに食べずによくお皿のイチゴを
フォークで転がして眺めている子でした。
 あるとき泣き出したので行ってみるとお兄さんが沙耶のイチゴを、食べてしまって
いたり、お兄さんを怒ると「沙耶が食べたくないんだと思って・・」といっていたり、
・・・今にして思えば保育園でもレオ君が私のりんこ取ったとか、みかん取ったとい
うのは沙耶はそうして香りを楽しんでいるところを食べられてしまったんだと思い出
すのです。
 所沢にイチゴ狩りに行ったときも食べるというよりも一つ取ってはゆっくりと眺め
て楽しんでいる姿が記憶に残っております。
  沙耶はその後5歳の2月になかなか治らない風邪から急性小児性白血病になり、義
母も入院中でしたので別々の病院に通いました。翌月の春、桜を差し入れると楽しそ
うに眺めておりました。イチゴやりんごをお見舞いには喜んでおりましたが、その夏
にサクランボをいただきましたときはとても大喜びで、食べ終わった翌日も「ねえね
えお母さん、ここにふうんとねサクランボの甘いにおいが残っているでしょう、いい
におい、おいしかったなあ、また食べたいなあ、サクランボのはたけみてみたいなあ。
」といっておりました。「またね、来年また食べようね、治ったらサクランボ食べに
行こうか、お父さんのお友達がサクランボ畑いっぱいもってるから・・・。」といっ
たらうなづいて休んでおりました。結局主人の友人という山形のサクランボ園にも行
くことはありませんでした。
 最後の春差し入れに公園から折った桜を持っていきましたが、桜は病室に入れても
らえませんでした。そんなときに「お母さん、沙耶ちゃん今まで幸せだったよ、もう
すぐふわふわっと、お花見や、イチゴ畑や、さくらんぼ畑にいけるんだ。沙耶ちゃん
とってもね、軽くなってきたの。」といっていたのを覚えています。思わずこのとき
に涙が止まらなくなり沙耶に何度も謝ったのでございます。なくなったのはその2日
後でございます。
 つつじがさいているころでございました。その葬儀で自分のせいで沙耶があんなに弱
かったと悔やみましたが、主人に慰められ、残った子どもを支えに今まで生きてまい
りました。お付き合いの花見もそれ以降一度も行きませんでした。かわいらしい果物
も、イチゴ、サクランボは特に食べることも見ることもつろうございました。
 去年用賀の娘の嫁ぎ先に行った折、孫娘が砧公園に行きたいと申しましたので妊娠
中の娘といったのですが、満開の桜の下で子どもたちがあそんでいるのを見て、思わ
ず沙耶を思い出して泣き出してしまいました。桜の下でぴょんぴょんとピンクの服を
着て飛び回る沙耶の姿があった気がいたしました。
  そのことがあって主人と娘とも話をして今まで蓋をしてきた沙耶への思いを、これ
から少しずつほぐしていってはどうでしょうということになりました。皆さんに機会
があればお話して沙耶の短い人生を思っていただければそれが沙耶の生の証ではない
のかと思うようになりました。誰もお聞きになりたくはないかもしれませんが、これ
からも沙耶について投稿していきたいと思います。二人の子も自立したいま歯を食い
しばるほどの張り詰めた日々でもなく、沙耶について思い出してあげよう、生きてい
れば24歳、もう結婚という年でございましたでしょう。

 でも思い出そうにもなぜあの子が桜の下でぴょんぴょんと飛んでいたのか思い出せ
ませんでした。長い間思うまいとしてきたためか忘れてしまったのではないかと悲し
くなってしまいもしました。でも、主人の一言から私も主人も昔の沙耶の姿を昨日の
むことのように思い出せたことをうれしく思うのでございます。
 沙耶は桜がにおいでいっぱいとぴょんぴょんとび回っていたのでございました。短
い人生でしたが、沙耶には私たちがかんじられなかった、香りの世界が奥深く広がっ
ていたことを愛久作の桜の香りで思い出したところでございます。21日には墓参り
に愛久作を持ってまいりました。それまで息子と主人とで沙耶の写真を出して愛久作
のお花見をしたところでございました。息子も今年結婚して別居することになってお
ります。残った沙耶を思い出してあげたい、これから私と主人で7歳のままの沙耶を
育てていきたいと思っているところでございます。

 800字ということでしたが、思わず書いてしまいました。支離滅裂な文章ですか
ら不要な部分は割愛くださいませ。愛久作という桜、家にも植えておきたいと思いま
す。沙耶と果たせなかったサクランボ狩りも行ってみたいと思います。さくらんぼの
甘くて美味しい香りを、孫とともに感じてみたいと思います。そのときには是非、石
井様はじめ皆様のところにお邪魔させていただき、香り高いサクランボをお願いいた
します。私もサクランボの香りがわかったらきっと沙耶の気持ちになれるような気が
します。お花のほかに皆様につまらないお願いをして申し訳ございません、山形産直
ネット皆様のご健勝とご多幸をお祈りいたします。