<-top

啓翁桜(敬翁桜)の原木を訪ねて 農業山形2003・12

(財)山形県農業振興機構


啓翁桜(敬翁桜)の原木を訪ねて
                             石井久作
                             (山形県花木生産者協議会顧間)

福岡県久留米市は、啓翁桜発祥の地である。平成15年9月12日、かねてより念願であった、
啓翁桜の育成者良永啓太郎氏の墓参と原木調査にうかがうことができた。
案内してくださったのは、良永氏の愛弟子、弥永太郎氏のご子息、太助氏で、
今も現役で農業をやっておられる。太郎氏の作った啓翁桜の園地を見せていただいたが
山形の啓翁桜と良く似ていた。
 良永氏宅を訪ねると、なにやら桜らしきものが立っている。
近づいて見ると我々を待っていたかのように狂い咲きしており、
紛れもなく啓翁桜であった。良永氏の当主も、太助氏も、今までそれにはきづかなかったとのことで、
出会いに感謝した。山形で栽培されているものと花は良く似ていたが、葉が少し細いなど、
まったく同じとはいえなかった。今後の調査結果が楽しみである。
 太郎氏は幼少の時から青年時代まで良永氏について、あせぼ、つつじ等を切って売る技術を教わったという。
氏は平成2年に亡くなられたが、啓翁桜の普及のみならず、福岡の花き産業に多大の貢献をされた。
 ご健在の太郎氏の奥様から仏前で昔のことをお聞きした。それによれば、
奥様が太郎氏に嫁ぐ8年前に良永氏は他界、太郎氏は良永氏をしたい[敬翁桜]と命名したという。
 しかし一般には「啓翁桜」の方が広く使われたようで、このことから、その後の混乱が起きたようである。
良永氏の墓所は近くの曹洞宗山本山観興寺である。そのあたりにも啓翁桜がぽつぽつと見られた。
地の利から考えると、海外から渡来したものであってもおかしくない。
今度は山形で改良した啓翁桜をこの地で試作してみたらどうだろうか。
山形を起点として世界に発信できる花、啓翁桜究明の旅は、今始まったとも言える。

写真1 良永啓太郎氏実家に残る啓翁桜
    山形のものより葉が細い等やや違いがみられる。


写真2 弥永太郎氏の啓翁桜園地
    山形のものと良く似ている


農業山形
2003.12 P65