みやこ富士桜

 2014-2015年 南陽市の渡辺氏よりいろいろとお話とご紹介を受けてお話を進めている中で、ただ利益にだけこだわり生きるあり方にとらわれず、人生の美しさを大切にするという教義にふさわしいイメージの桜をいくつか提案させていただいた。みやこ富士桜は、その教義が示すように、成長が遅くてそのままでは木や草に負けて枯れてしまうだろうし、増殖に苦労し商業的価値は低いだろう。数人のマニアならほうがいな費用を出してくれるかもしれないが長続きしないだろう。また、桜のど素人ではほしがったとしても、すぐに枯らしてしまうことだろう。しかし、優良な遺伝子の濃縮体である。みやこ富士桜より生育を旺盛にして花弁を1/3に減らしたら結構元気な桜ができた。お宝にせよ遺伝子にしろ、分相応なところがあるだろう。優良な遺伝子の濃縮体が商業利益を生まないというのは皮肉であるが、農産生物には良くあることだ。
 花はすこぶるいいとおもう。牡丹のようだ。「(力がなくてはさみで切れない)枝を細くしてくれ」「八重八重とした桜がいい」などとの要望によりそれらの因子を掛け合わせていった結果、枝は細く花は大きい桜が生まれた。交雑系は、鴛鴦富士桜系統と御殿場富士桜系統の雑種で、彼岸桜と兼六園菊桜の血が入っている。
 育成地は山形であったが、栽培地は静岡県富士市である。富士桜にぴったりの土地であったせいで山形では三日と持たない花もここでは一週間くらい咲いている。

 比較的開花期間の短い桜であるし、写真をごらんになってのとおり肥料の状況によって花弁数や花の顔が露骨に変化するタイプである。2009年の花は見事で、以後この花を見て楽しんでいたけれども盆栽のように自分だけ楽しんでも仕方のないものである。この写真をいろいろなお話の場でスライドで見せると歓声が上がる。自分でも天女を山猿が娶ったような気分になれたけれども、放置して葬ってしまうのはとてももったいない桜だった。今までも商業的仕事にかまけてだいぶそんな桜を失ってしまっていたし・・・いつかは、商業的回転から逃れて美しい国日本でみやこ富士桜のように美しい花を集めて育てたいと思うけれど。
 命名は東本願寺の総長猊下にお願いしていただいた。ほとんどの株は出家していただいたので私にほしいと問い合わせても無駄だ。どうせ素人ではすぐにからしてしまう。下手な独占欲に駆られることなく、美しい桜を見せてくれる東本願寺・南陽市に桜の咲くころ見に行ってほしい。

2008年頃 初花 山形市 2009年 地植 山形市 2015年 鉢植え 富士市 2015年 鉢植え 富士市